フェノール樹脂は、100年以上の歴史を持つ最古の人工プラスチック素材です。独自の進化を遂げ、優れた特性により今日でもさまざまな工業製品に使われています。今回は、フェノール樹脂の特性と製造方法、そしてフェノール樹脂パーツの多様な用途について深く掘り下げていきます。
また、フェノール樹脂パーツの試作品の手配方法や試作品製作における注意点も詳しく解説してみました。製品開発に取り組んでいる企業の責任者や担当の方はぜひ参考にしてください。
フェノール樹脂の特性と製造方法
フェノール樹脂は、世界で初めて植物以外の原料から人工的に作り出されたプラスチック素材です。現在でも高い機能性からさまざまな工業製品に使用されています。ここでは、フェノール樹脂の特性と製造方法などについて見ていきます。
フェノール樹脂パーツの特性
フェノール樹脂は、耐熱性が150℃から180℃と非常に高いため、高温環境でも強度の維持が可能です。さらに熱伝導性が低いため、優れた断熱材としての性質も持っています。しかし、マイクロ波を吸収して発熱する性質があるため、電子レンジでの使用は適していません。
他には絶縁性や難燃性、接着力、酸に対する耐性、寸法の安定性という長所もあります。ただしアルカリ性の物質には弱く、また衝撃に対する耐性はそれほど高くないという点には注意が必要です。
フェノール樹脂パーツの用途
フェノール樹脂はいわゆるエンジニアリングプラスチック素材ですが、耐熱性や難燃性、電気絶縁性などの特性を活かしてさまざまな製品に使われています。
フェノール樹脂は、主に自動車部品や電子機器のパーツ、さらには断熱材として活用されてきました。最近では、安価で耐薬品性に優れていることから電子部品やメッキ板の塗料としても注目されています。また、寸法精度の高さや低コスト性から鋳造での砂型の結合剤としても欠かせない存在となっています。
フェノール樹脂パーツの製造方法
フェノール樹脂は、石炭を原料にした石炭酸のフェノールと、有機化合物の一種であるホルムアルデヒドの合成によって作り出されたプラスチックの一種です。
また、合成環境によりレゾール樹脂とノボラックという2つのタイプに分けられます。レゾール樹脂は、アルカリ触媒の存在下でフェノールとホルムアルデヒドを合成し、通常は液体状態ですが加熱すると硬化します。一方、ノボラックは酸触媒下で縮合重合するのです。
一方、フェノール樹脂は、熱硬化性樹脂でありながら、一般的な熱可塑性樹脂の加工方法である射出成形に対応する能力を持っています。さらに、断熱材としての用途もあり、発泡剤を混ぜて成形する発泡成形にも対応しています。これらの特性により、フェノール樹脂は多岐にわたる用途で利用されるようになりました。
輸送用機械でのフェノール樹脂パーツの活用
次に、今後の成長分野として期待される航空機など輸送用機械において、フェノール樹脂パーツがどのように活用されているのか見ていきましょう。
航空機や鉄道車両部品での利用例
フェノール樹脂パーツは、その耐熱性・難燃性とコスト効率の良さから、航空機のギャレーや荷物棚など内装に使用されています。これらのパーツは、米国連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)の厳格な審査を通過し、航空機の内装に採用されたのです。
また、フェノール樹脂を使った複合型接着剤は優れた接着性を示す反面、硬くて脆いという欠点を抱えていました。しかし、ポリビニルアセタールあるいはニトリルゴムとのブレンドによりこの欠点を克服し、現在では加熱硬化型の構造用接着剤として航空機や鉄道車両、自動車などに使用されるようになりました。
フェノール樹脂パーツ利用のメリット
まず航空機部品に利用した場合のメリットについて解説します。航空宇宙産業では、機体の軽量化が大きな課題であり、軽量素材により高い燃費効率で排出量の低い航空機の生産が求められています。
フェノール樹脂パーツでは、この軽量化に加え機械強度や耐熱性、難燃性といった難しい要求に応えられ、また部品の耐久年数を伸ばすことも期待できるのです。
フェノール樹脂パーツの試作品手配
ここまでの解説で、航空機や鉄道車両部品への活用におけるフェノール樹脂パーツの優位性がわかりました。しかし、実際に製品を開発する場合にはトライアンドエラーが必須であり、そのプロセスにおいては試作品の手配が必要不可欠となります。
それでは、次に、フェノール樹脂パーツの試作品の手配方法について詳しく説明していきましょう。
フェノール樹脂パーツの試作方法
樹脂パーツの試作には以下の4つの方法があります。樹脂部品の形状や樹脂の種類によって試作方法は異なりますので、試作品製作メーカーとの綿密な打ち合わせが必要です。
- 切削加工:少量の部品を高精度で製作するのに適しています。
- 真空注型:低コストで少量のパーツの製作に適していますが、精度はそれほど高くありません。
- 射出成形:大量のパーツを製作するのに最適な方法です。
- 3Dプリンター:機能評価には適していませんが、短期間で製品を納入できます。
製品の量産に至るプロセスと試作品製作
製品開発から量産までの一般的な流れは以下の通りとなります。この中で、下線を引いた部分、すなわち開発設計から量産設計までの間で試作品によるトライアンドエラーが行われます。
アイデア構想→開発設計→製品設計→量産設計→製造
また、この時に行われる試作品の製作は、受注⇒設計・図面作成⇒製造・部品調達⇒組み立て⇒納品といった手順をたどります。
試作品手配における注意点
商品開発において試作品製作は非常に重要なフェーズになります。製品の動作確認やデザイン評価に使うからです。ここでは、試作品製作メーカーへ製品イメージを伝える際に注意するべき事柄を説明します。
まず、試作品製作には設計図が必要です。設計図の精度は試作品の品質に直結します。設計図が不十分だと、時間と費用の無駄を生んでしまうのです。また、設計図が書けない場合には設計から対応してくれる業者を選べばよいでしょう。試作品だけでなく製品開発全体を見据えた業者選びが重要となります。
次に、試作品メーカーに製品イメージを伝えます。この時、メーカーとのイメージ共有が重要で、そのためにはよく話し合うことが大切です。経験豊富なメーカーであれば、依頼者の意図を深く理解し適切なアドバイスや提案をしてくれるでしょう。
また、試作品には以下のようなモデルがあります。目的に応じてどのモデルを選んだらいいのか決めておきましょう。
- デザイン検討用モデル:外観や形状を確認するためのもの
- 原理モデル:製品の機能を検討ためのもの
- 性能検討用モデル:機能だけでなく品質を確認するためのもの
まとめ
今回は、今回は、フェノール樹脂の特性と製造方法、そしてフェノール樹脂パーツの多様な用途などをご紹介しました。耐熱性や難燃性、電気絶縁性などの特性を持つフェノール樹脂は、航空機や鉄道車両部品にも活用され、軽量化と高い機械強度を実現しています。また、製品の開発における試作品の製作は非常に重要で、製品化の成敗を左右しかねません。
静岡県御殿場市にあります「株式会社SHAPE FIELD」は、自動車部品や産業用ロボット・医療機器部品の製造をはじめ、航空機・鉄道車輌のフェノール樹脂複合材料部品の試作を承っております。今回の記事で取り上げたフェノール樹脂パーツの試作でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。