
高い性能が求められるレーシングカーにはどのようなパーツが使われているのでしょうか?今回は、軽量化や堅牢性など、レーシングカーの性能を高めるパーツに求められる要素を一つひとつ詳しく解説していきます。さらに、未来に向けた課題や今後の取り組みについても紹介します。レーシングカーの製造に関わる方や、レーシングカーに最適なパーツをお探しの方はぜひ参考にしてください。
レーシングカー用パーツに求められること
ここでは、まずレーシングカー用パーツに求められることを整理し、最適な素材を探っていきます。
軽量化が正義
レーシングカーは、その動きを軽快にするために、軽量化が厳しく追求されています。市販車を基にしたGTカーなどのレーシングカーでは、レースに不要な装備、たとえばエアコンやオーディオが取り外され、リアシートや助手席も除去されて軽量化が進められています。さらに、材質を軽いものに変更できる部分では、徹底した軽量素材の選定など車全体の重量削減が行われるのです。
カーボンなどの軽量素材を使用し、細部まで軽量化を追求し、規定で定められた最軽量=「最低重量」に近づけることが目指されます。しかし、F1などの技術レベルが高いレースでは、レーシングカーの重量はこの最低重量よりも軽く作られていることをご存知でしょうか?
2010年のF1マシンの最低重量は、ドライバーの体重を含めて620kgと定められています。ドライバーが60kgだと仮定すると、マシンの重量は560kgとなりますが、実際のマシン本体の重量は560kgよりも軽く作られています。
軽自動車の車両重量が800kg前後であることを考えると、レーシングカーがいかに軽いかが理解できるでしょう。軽すぎる分の重量を補うために砂の重りを使用し、これを運動性能に影響が少ない適切な位置に配置して最低重量に近づけているのです。
エンジンもパワフルなだけではダメ
レーシングカーの性能を高めるには、まずよりパワフルなエンジンが必須となります。しかし、パワーが強ければいいというわけではありません。強力なエンジンは必要ですが、その一方で軽量かつコンパクトな設計も重要です。
コンパクトにすることで、最適な場所に設置でき、他の部品への影響を最小限に抑えられます。また軽量・コンパクトな設計がひいては運動性能向上に寄与できます。また、コンパクトなエンジンは車体の形状を小型化できるので、空気抵抗を減らすことも可能となるのです。
空力性能はとくに重要なファクター
レーシングカーの設計において、エンジンの性能以上に重視されるのが空力性能です。空気抵抗を最小限に抑えることはもちろん、空気の流れを理解し、それを最適化することが求められます。
レーシングカーの開発実験は、「風洞」という施設で行われ、空気の流れをコンピューターで解析します。しかし、実際の走行状況を完全に再現することはできないため、実験データと実戦データを比較した上で人間が最終判断を下すのです。
空力性能はレーシングカーの性能を決定する重要な要素であり、その最適化には高度な技術と経験が必要なのです。
レースを制するには堅牢性も重要
レーシングカーに求められるのは、軽さや速さ、そして運転しやすさだけではありません。高速で急カーブを走行してもコースアウトしない堅牢性も必要です。次の項で詳しく解説しますが、こうしたレーシングカー用パーツに求められる要件を満たす素材としてCFRPが登場してくるのです。
レーシングカー用パーツの理想の素材:CFRP
次に、レーシングカーに求められる要件を踏まえた上で、現在レーシングカー用パーツとして主流となっているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を取り上げます。
CFRPの特性とメリット
レーシングカーのパーツとして広く使われている素材である、CFRPの特性とメリットについて見ていきましょう。
CFRPは、スチールの5分の1という軽量素材です。そのためレーシングカーのパーツは非常に軽く、子どもでも簡単に持ち上げられるほどです。CFRPは強度が高く、スチールの最大10倍の強度があります。これにより、レーシングカーの安全性が向上するのです。
樹脂とカーボンファイバーを組み合わせることで、相乗効果によりさらに強い素材が生まれます。これにより、高速走行での激しい遠心力や衝撃にも耐えられる堅牢性が得られました。また、CFRPは、レーシングカーのボディなど目に見えるほぼすべての部分やシャシーなどでも使用できます。
加工技術の進化によるCFRPの普及
産業用オートクレーブ加工の導入により、レーシングカー製造業界ではCFRP部品の使用が一般的になりました。この加工法は、熱硬化性樹脂と炭素繊維の複合材料を高温・高圧で固化させます。
この技術により強度と軽量性を兼ね備えたCFRP部品が製造され、レーシングカーをはじめ、航空機や新幹線、人工衛星などの先端技術分野でも活用されるようになりました。
CFRPの課題
レーシングカー用パーツにとって理想の素材と言えるCFRPですが、良い点ばかりではありません。製造には手間とコストがかかるという問題があります。
さらに加工やリサイクルが難しいため、現在ではレーシングカーや航空機、高級スポーツ用品、医療機器など一部の分野でしか使用されていません。しかし、これらの課題を解決することで、CFRPのさらなる普及が期待されます。
レーシングカー用パーツの未来
前項での課題を踏まえて、レーシングカー用パーツの未来について探っていきます。高コストでリサイクルが難しいというCFRPの課題に対する新たなソリューションが待たれるところです。
高コスト性からの脱却
高性能なCFRPですが、製造に手間とコストがかかるという課題を抱えています。とくにパーツを成形するための金型の開発が高コストになるというのです。そこで、ここでは低コスト化に向けた日産での取り組みを紹介します。
日産は、CFRPの製造コスト削減を「金型の試作回数の最少化」に求めました。そして、金型内に設置された温度センサーで金型を「透明化」することで、樹脂の流れを可視化したのです。さらに、樹脂の流れをシミュレーションし、最適な形状の溝を配置しました。
これにより、高品質なCFRP製パーツを効率的に成形することが可能となり、金型の開発期間を約50%短縮できました。こうした取り組みで、CFRPの高コスト性からの脱却に道筋をつけたのです。
環境への配慮とサステナビリティ
現在、あらゆる工業製品に環境性能が求められており、レーシングカー用パーツのCFRPも例外ではありません。
しかし、CFRPのリサイクルには課題があります。廃棄量が増えたときの収集方法や、リサイクルを容易にする技術開発が必要になるのです。また、CFRPは「マテリアルリサイクル」が難しいので、「サーマルリサイクル」が採用されています。
車の軽量化を目指すなら、CFRPの量産車への採用は有効です。しかし、環境負荷を増やす最終処分は避けるべきでしょう。CFRPの未来を切り開くためには、リサイクルのしくみ作りを早期に行い、レーシングカー用パーツだけでなく一般車両への活用を増やすことが求められています。
まとめ
今回は、軽量化や堅牢性などレーシングカー用パーツに求められる特性や、未来への展望と取り組みについて解説してきました。製造業にとってコスト削減はいつの時代も変わらないテーマであり、さらに今後はサステナビリティの重要性も一段と高まっていくことでしょう。
静岡県御殿場市にあります「株式会社SHAPE FIELD」は、CFRP成形によるレーシングカーやレースバイクの部品製造に取り組んでおります。レーシングカー・レースバイクの高性能パーツをお探しの方は、ぜひお気軽にご相談ください。



